僕は複雑な感情を抱いたまま、母親と一緒に家を出た。家を出ると、ガレージに車体の色がシルバーのファミリーカーが止まっていた。

「えっ!」

僕はそのシルバーのファミリーカーを見て、目を丸くした。

このファミリーカーは小学校高学年ぐらいまで〝家族〟と一緒に出かけていた思い出の車だったが、父親の仕事が忙しくなるのと同時に売却したはずだ。

ーーーーーー父親ともう一度会いたいと願ったからか、車も一緒に戻ったらしい。

まるで願いをかなえたというよりも、幸せだったあのときに時間が戻ったような感覚だ。

「なつかしいなぁ、願」

そう言って父親は、ファミリーカーに視線を移した。

「うん、そうだね」

「この車で、色々なところに出かけたよな」

「うん、そうだね」

そう答えた僕の声は、かすかに震えていた。

むかしは、ほんとうにこの車で家族とよく出かけてた。夏には父親が運転する車で海にも出かけたことがあったし、家族三人でドライブをしたこともあった。家族と過ごした時間は、どれも僕の大切な思い出だ。