「それで、願いはどうなったの?まだかなえたい願い、残ってるんでしょ」

「あ、そうだった」

女神様にそう言われて、僕はかなえたい願いを思い出した。

僕のかなえたい願いは、母親のアルコール中毒を治すことだ。父親が仕事で家に帰って来なくなってから、母親はそのさびしさをまぎらわすためにお酒を飲み始めた。日に日にお酒を飲む量が増え、母親はアルコール依存症になった。

「母親のアルコール依存症を治したいんだ」

開いた口から、僕は小さな声で願いを言った。

「君、色々大変なんだね」

僕の事情を聞いて、女神様は眉を八の字にした。

「まあね」

女神様にそう言われて、僕は否定できなかった。お金に困ったことはなかったが、家族の形はなかった。

「その願い、かなえられるよね?」

僕は、不安そうに訊いた。

「お金で〝愛〟は買えないことはわかったけれど、〝治療〟はできるはずだ」

「だいじょうぶだよ」

そう言って女神様は、僕の願いを承諾した。

母親のアルコール依存を治して、むかしのように父親と一緒に暮らせることがうれしい。