「彼女のことが好きなのは、わかるよ。でも、好きだったぶん、お金がなくなって彼女とほんとうに別れるときの現実が、はかりしれないぐら悲しいよ」

「………」

正論を言われたせいか、僕は女神様になにも言えなかった。

神社に一万円を納めて願いをかなえているなら、数ヶ月前に別れるはずだった彼女とこうしてまだ会えている。僕があのとき、一万円を神社に納めなかったら、きっとつぼみとは別れていただろう。

あのときのことをふと思い出して、僕はお金の重みを改めて知った。

「僕の好きな人も五千円、この神社に納めたんだ。知ってる?」

僕は、つぼみのことを頭の中で想像しながら、女神様に訊いた。

「知らない。というより、一万円納めないと願いはかなえられないし、五千円納めても意味ないよ」

冷たく言った女神様の言葉を聞いて、あのときのつぼみの願いはかなっていないことがこのときわかった。そしてつぼみの代わりに、僕が彼女の願いをかなえている。いや、かなえているというより、彼女女性願いと僕の願いが一緒だった。

ーーーーーーやっぱり、僕が一万円納めなかったら、つぼみとは別れていたんだ。

そう思うと、あのときのたった一万円が、普段よりも価値があったことに今になって気づいた。