「人を愛するっていうのは、むずかしいことよ。あなたのいうとおり、大好きな人のために一緒にいてあげるのも愛だけど、その行為が行き過ぎると、束縛になってしまう」

女神様は、淡々とした口調で僕に〝愛〟に対する考えを教えた。

女神様にゆがんだ愛情表情を指摘された僕は、このとき初めて人を好きになる怖さと楽しさを知った。

「ほんとうに愛しているのだったら、愛している者のことを一番に思ってあげるべきよ」

女神様の言い方は、やさしかった。けれど、女神様が導き出した答えがむずかしく、子供の僕にはまだはっきりとわからなかった。

「恋って、むずかしいね」

そう言って僕は、女神様の胸に顔を埋めた。

十六歳にもなった男性が女性の胸に顔を埋める行為は恥じらいもあったが、誰も見てない今は甘えたかった。