「じゃ、あの二人の願いはどうなるの?」

僕は、心配そうな顔で訊いた。

「それは、わからない」

女神様は、短く答えた。

「そうか………」

彼女とは僕の人生になんの関係もなかったが、あの女性がもう一度流産して不幸になるのはなんとなく嫌だった。

「なんのお金?」

僕がサイフから取り出した一万円札を見て、女神様は不思議そうな顔をした。

「この一万円で、彼女の願いをかなえてくれ」

そう言って僕は、一万円札を女神様に差し出した。

男性の願いも彼女と一緒だったから、二人で一万円でいいはずだ。

「君、やさしいんだね」

女神様は、目尻を下げて言った。

「そうかもね」

僕は、苦笑した。

今回は、たしかに自分でもやさしいことをしたと思った。しかし、今までやさしいというよりも、自分の欲望をお金で満たしているだけなような気がした。