「でもね、産まれてくる予定だった子供、流産したんだって」

僕の嫌な予感は、的中してしまった。

今回ばかりはハズレてほしいと強く願っていただけに、女神様が口にした言葉が絶望的にショックだった。

「そ、そんな………」

僕の口から出た震えた声が、静かな夜に悲しく溶け込んだ。

若くして肺がんと宣告されただけでも辛いのに、産まれてくる予定の子供までも親より先に亡くなるなんて……。

出会ったこともない人だったけれど、彼の人生を聞くと涙が込み上がる。

「それ以降、一度だけ彼が残った二万円だけ持って神社に寄って私にこう言ったの。『子供が流産してよかった。流産しなかったら、僕は大好きな妻と子供を捨てた父親になるからね』って」

女神様が言った言葉を聞いて、彼のそのときの表情が目に浮かんだ。笑っているけれど、泣いてるような、そんなとても複雑な表情。

彼は弱音を口にしていないが、きっと心の中ではすごく泣いていたと思う。