「でも、私は彼の行動を否定したの」

浮かない表情で、女神様はそう言った。

「どうして?お金を納めなかったら、彼は子供の顔を見れないまま死ぬんだぞ!」

女神様が彼の行動を否定した理由がわからず、僕は声を荒げた。

僕はまだ結婚もしてないし、女性と付き合ったこともない。しかし、好きな人と交際を重ね、子宝にも恵まれたにも関わらず、子供の顔を見れないまま死ぬなんて、僕でも辛いことはわかる。

「一瞬でも子供の顔を見たら、自分の子供が成長していくまで生きたいと思ってしまうでしょ。だから、私は彼の行動を否定したの」

女神様の言い方は冷たかったが、説得力があった。

お金には限りがある。でも、人間の欲には限りがない。女神様が説得した言葉に妙に納得する自分がいて、反論できなかった。

「それで、その彼はどうしたの?」

僕は、低い声で訊いた。

「彼は子供が産まれるまで、神社にお金を納め続けて自分の子供を待ち続けたよ。ずっとね」

女神様の声色が変わって、僕の胸が変にざわめき始めた。

変な胸騒ぎが、なにか嫌な予感を呼んでいる感じがした。僕の嫌な予感はなにかと当たってしまうことが多いだけに、今回だけはハズレてほしいと思った。