手紙にも書いてある通り、私と弘斗は、席が隣同士ということもあって、よく話すようになった。どうでもいい話をしたり、先生に対する愚痴を聞いてもらったり、CDの貸し借りなんかもした。
自然と、私の恋は育っていった。芽から葉が出て、空に向かって伸びていくように。
私にとって、恋は落ちるものではなく、吸い込まれるものだった。
お皿みたいな形の何かがあって、その上を、恋という名前のボールが転がり始める。真ん中には穴が空いていて、恋は転がりながら、少しずつ遠心力を失っていく。
恋が描く円はゆっくりと小さくなっていって――やがて、吸い込まれるように、穴に落ちる。
そこで初めて、気持ちを自覚するのだ。ああ、この人のことが好きなんだ、と。
たいていの女の子なら、一ヵ月も隣の席で生活していれば、弘斗のことを好きになってると思う。
決してイケメンなわけではないけれど、優しくて聞き上手で、そしてとても笑顔が素敵だ。弘斗は、とても魅力的な男の子だった。
もしかすると、恋に吸い込まれた私の独断と偏見による、勝手な評価かもしれないけれど。
そして、隣の席が私でよかったな、とも思った。
実は付き合う前、僕は玲美に、さりげなくアピールしていました。
玲美が好きだっていうバンドの話を振ってみたり、玲美が楽しみにしているって話していたドラマを見るようにしたり。
一時期、玲美が格好いいって言ってた芸能人の髪型を真似したりもしてたんだけど、その話はいくら手紙でも恥ずかしいから割愛。
まあ、玲美は全然気づいてなかったみたいだけどね。僕なりに必死でした。
「ふふっ」
そんなの、気づくわけないじゃん。
悲しいのに、思わず笑ってしまった。そしてまた、ギュっと胸が締め付けられる。
でもたぶん、私の好意も、弘斗は気づいてなかったと思う。悟られないように、頑張って隠していたし。
まあ、だからお互い様だ。