そのあとは出身中学のことや、入っていた部活、趣味のことなどを話した。三分くらい話すと、私も緊張は解けて、比較的自然に話せるようになった。
弘斗が少し遠い町から通っていることや、中学のときはバスケ部だったこと、趣味が私と一部かぶっていることを知った。
「高校でもバスケはするの?」
「うーん。どうしようかな……。中学のときの先輩がこの高校のバスケ部にいて、誘われてるけど、別のこともしてみたいし……。まだ迷ってる」
結局、弘斗は部活には入らなかった。
「あ、そのバンド、私も好き。アルバム全部持ってる。最近、ドラマの主題歌とか歌ってるよね」
「へぇ。そうなんだ。あんまりテレビは見ないからわかんないや。ドラマの主題歌ってことは、結構メジャーになってきたってことかな。なんかさみしい」
「わかる! 複雑だよね」
このときは、まだ恋とかそういう感情じゃなかったように思う。
けれど、好き、という気持ちの断片は見えていたのかもしれない。
カーテンの細い隙間から、朝日が差し込むみたいに、恋の予感は私をほんの少しだけ照らしていた。
今まで、恋をしたことがなかった私は、恋に憧れていた。
だからなんとなく、ちょっと大人びた男子にクラっときてしまっただけなんじゃないかと思った。あるいは、緊張のドキドキを恋のドキドキと勘違いしてしまう、いわゆる吊り橋効果みたいなものだったんじゃないかって。
けれど、それから半年もしないうちに、私は思い知ることになる。それは確かに恋だったのだと。
初対面のときに感じた恋の予感は、間違っていなかったのだと。
――私は手紙の続きに目を落とす。