高校三年生の玲美は、自分の名前が宛先として書かれた、好きな人――弘斗からの手紙を発見してしまう。
 弘斗からの手紙は、まるで遺書のようだった。
 玲美がこの手紙を読んでいるってことは、僕はもうこの世にいないんだね。
 そんな文章で始まっていた。
 玲美は読み進めながら、弘斗との思い出を振り返っていく。
 初めて出会った日のことや、初めて二人で出かけた日のこと、付き合い始めた日のこと。
 ライブに行くはずだった日の前日、弘斗が急に行けなくなり――彼の難病が発覚したこと。
 そして、手紙の最後には、弘斗の願いが書かれていた。
 僕のことは綺麗さっぱり忘れて、どうか幸せになってください。
 最後まで優しい弘斗のメッセージに、玲美は感情を爆発させ、手紙をちぎって泣きじゃくる。
 寝ていた弘斗が目覚め、手紙が玲美に見つかってしまったことを悟る。
 一週間後の手術を成功させるように玲美は弘斗に言う。
 手術は成功し、二人は幸せな生活を送り、弘斗は七十三歳で亡くなった。