そして一週間後。

 弘斗の手術は成功した。私は盛大に泣いた。

 リハビリを重ねて、弘斗は無事に退院した。

 それからは、信じられないくらいに幸せな日々がやってきた。

 弘斗は半年に一度、検査のために通院はしているけれど、普通と何ら変わりない生活を送れるようになった。

 私より一年遅れて大学生になった弘斗は、とても生き生きとして見えた。

 私たちは、約束を一つひとつ果たしていった。

 色々な場所に行った。

 弘斗と一緒に、色々なものを見て、聞いて、感じた。

 あのときには行けなかったライブにも参加した。

 それから時は過ぎて、私たちは結婚した。子どもができて、やがて孫もできた。

 これ以上ないってくらいに、幸せな生活を送った。奇跡みたいだった。



 そして――つい先日。七十三歳で、弘斗は私よりも先に亡くなった。

 私もきっと、先は短い。やり残したことなんて数えきれないくらいあるし、もっと生きていたかった。そう思えるくらいに、幸福な人生だったのだろう。

 今、そう言えるのは、間違いなく弘斗のおかげだ。

 今日は弘斗の葬式で、彼にお別れを言うために、たくさんの人たちが集まっていた。

 私が見たことのない、様々な年齢の人が、代わる代わる訪れた。弘斗の教え子たちだった。

 弘斗は大学を卒業してから、定年までずっと、高校の教師として働いていた。

 もちろん、親戚や大学時代の友人なんかも参列していた。

 彼らはみんな一様に、弘斗の死を悼んでくれた。私の知らない弘斗のエピソードなんかも聞けた。

 弘斗は、多くの人間に慕われていた。