「勝手に終わらせないでよ!」

「でも……」

「でもじゃない!」

 弘斗の言いたいことはわかっている。

 彼はもうすぐ手術をする。手術の成功率は約二十パーセントと聞いていた。決して高い数字ではない。それどころか、失敗する可能性の方が大きい。そして、手術の失敗はそのまま死を表す。

 もう二度と、大切な人に会えなくなってしまうかもしれない。

 だからもしものために、手紙を書いておく。

 それは用心深くて真面目な、彼らしい行動だった。

 私が同じ状況に置かれたらどうするだろう。やっぱり、手紙を書いておくような気がする。

 だから弘斗のことを責める権利なんてないのかもしれない。

 けれど、やっぱり嫌だ。

「弘斗、この手紙に、さいごにお願いがあるって書いたよね」

 もう破いてしまったけど。

「うん」

「じゃあ私も、弘斗にさいごのお願い、していい?」

「今の僕にできることなら」

 点滴の針の刺さった腕を見せびらかすようにして、弘斗は言った。自虐ネタもお手の物だ。そのことが、今はどうしようもなくつらい。

「手術、絶対に成功させて。そんで、まだできてなかったことしたりとか、行けてなかった場所に行ったりとか、しよう。私と一緒に。もちろん、ライブも。だから、絶対に死なないで。お願い」

 手術はもう、一週間後に迫っている。まだ高校三年生の私には、成功を祈ることしかできない。無力をかみしめて悔しさに押しつぶされそうになるのは、もう何度目だろう。