「どうしたの、玲美。なんで泣いてるの? 酷い顔だよ?」
のんきな弘斗の声音。
誰のせいで泣いてると思ってるの? 誰のせいで、こんなに酷い顔になってると思ってるの?
「弘斗がっ……弘斗がこんなもの書くからじゃんっ!」
私は涙でぐちゃぐちゃになりながら、それでもここが病院だということを思い出して、小声で言った。
今から三十分ほど前。いつも通り、弘斗の見舞いに訪れた私は、ベッドに併設された小さなテーブルの上に手紙を見つけた。
当の本人は、寝息を立ててぐっすり眠っているようだった。
「ああ。見つかっちゃったか。……あれ?」弘斗は壁にかかった時計を見る。「でも、今日は早いね。学校は?」
時刻はまだ午後の二時だった。本来なら、私はまだ学校にいる時間だった。
しかし、ちょうど学校でインフルエンザが流行していて、授業が午前中で終わったために、いつもより少し早めに病院に到着したのだ。おそらく、弘斗は油断して、手紙をテーブルの上に置いたままにしていたのだろう。
「今日は学級閉鎖。インフルエンザが流行ってて」
弘斗が上半身をゆっくり起こす。緩慢な動きは、寝起きだからという理由だけではない。
「そっか。玲美は大丈夫?」
弘斗の声は、感情的になっている私とは真逆で、どこまでも穏やかだ。
「私の心配なんかしてる場合じゃないでしょ? 弘斗のバカ!」
「玲美……」
闘病中の弘斗は、以前に比べて痩せた。細かった身体はさらに細くなった。