玲美は覚えていますか? 僕たちが出会ったあの春のことを。



 書き出しよりはまだましだけど、それでも言い回しが気取っているように感じられた。

 倒置法なんて使って、格好つけちゃって。バカみたい。バーカバーカ。

 心の中で、子どもみたいな罵倒をする。

 ああ。弘斗に、直接言ってやりたい。

 それで……なんだっけ。私と弘斗が出会った春?

 覚えてるに決まってるでしょ。むしろ、忘れることなんて絶対にできない。だって、私の初恋の始まりだったから。



 高校一年生の春に、私は筒木(つつき)弘斗と出会った。

 新しい制服に身を包んで、不安を抱えて、緊張しながら校門をくぐった。

 高望みすぎて無理だと思われていた入試をどうにか勝ち抜いて、憧れていた高校へ、私は入学を果たした。

 中庭に咲いていた桜の鮮やかさが、未だに印象に残っている。満開のピンク色が、とても綺麗だった。

 もう、三年近くも前になるのか……。時の流れは残酷だと思う。

 私が初めて弘斗と言葉を交わしたのは、入学式の次の日だった。

 同じ中学の仲の良い友達とは離ればなれになって、自分から知らない人に話しかけることなんてできない私は、無言で教室に座っていた。

 視線は机の上。誰かのイニシャルらしきアルファベットが端っこに刻まれていた。おそらく、この学校の先輩のものだろう。

 周囲では、コミュニケーション能力の高い人たちがさっそく会話をしていたけれど、それに入っていけるような勇気は、私にはない。頬杖をついて、ぼんやりしていた。

 だから、私が弘斗の存在を認識したのは、最初のホームルームの時間。担任の指示で、隣同士、自己紹介をすることになったときだった。