色々とやり残したことはあるけれど、おおむね満足です。

 僕の人生は幸せだったって、胸を張って言えます。玲美のおかげです。

 ありがとう。

 ありがとうなんて言葉じゃ、全然足りないけれど。



 私が弘斗の病気のことを知ったのは、それからすぐだった。

 弘斗がライブをドタキャンしてから、怖くて連絡することができないでいた。

 年をまたぎ、おめでたい空気がそこら中に蔓延している中で、私は深く沈んでいた。

 家族にも心配されたけど、愛想笑いでごまかした。

 友達から初詣に誘われたけれど、どうしても行く気になれなくて断った。

 そして三日後、弘斗からメッセージが届く。

 直接会って、話したいことがある。と、そう書かれていた。

 何度かメッセージをやり取りし、翌日の昼に会うことになった。このやり取りのときも、弘斗からのメッセージは単調だった。まるで、あまり接したことのないクラスメイトみたいな距離感が、私たちの間にある見えない壁を象徴しているようで、つらかった。

 今まで、弘斗と会う日の前は楽しみで仕方がなかったのに、そのときだけは違った。

 お腹が痛くなって、現実を知りたくなくて、明日なんて一生こなければいいって、本気でそう思っていた。

 当日、待ち合わせ場所に向かう私の足取りは重く、歩幅は狭くなる。

 すでに待ち合わせ場所にいた弘斗は、私を見ると、小さく笑った。

 申し訳なさそうな顔をしているようにも、困っているようにも、私を拒んでいるようにも見えた。