あと、もう一つ謝らなくてはいけないことがあります。

 玲美が楽しみにしてたライブ、結局、僕のせいで行けなくなってしまいました。

 玲美は「また別の機会に行こう」って言ってくれたけど、どうやら、その約束は果たせそうにありません。ごめんなさい。



「ライブなんて、今はどうでもいいよ。そんなの」

 だって、弘斗がいなくなっちゃったら、意味がないから。

 そんな約束より、私は弘斗に生きていてほしいのに。ただ、それだけでいいのに。



 高校二年生の冬休み。弘斗と、年末のライブに出かける約束をしていた。

 何組かのアーティストが出演するライブで、チケットの競争率はかなり高かったから、当選したときは嬉しかった。ライブ当日が楽しみだった。

 しかし、ライブの前日。弘斗からメッセージが届いた。

 その内容は「明日のライブ、行けなくなった。ごめんなさい」というものだった。

 理由も書かれていない、ただそれだけの素っ気ない文章だった。

 私は、わかった、とだけ返した。

 それ以降、弘斗からの返信はなかった。

 どうしたの、とは聞けなかった。怖かったから。

 ショックだったし、戸惑いもした。弘斗とライブに行けなくなってしまったこともそうだけど、それ以上に、弘斗からの、彼らしくない無味乾燥なメッセージが。

 いつもの誠実な弘斗だったら、行けなくなった理由とか、埋め合わせのこととか、そういうことを私に話してくれるはずなのに。

 まるで、そんな余裕がないというように、弘斗からのメッセージはそれ以降届かなかった。

 そのことが、どこか私を拒絶しているように思えて、苦しかった。

 もしかして、私のことが嫌になってしまったのか、などと考えて、泣きそうになった。

 ライブに一人で行く気にもなれず、私は自室でふさぎ込んでいた。

 ベッドに寝転がって、天井を見てボーっとしていた。何か別のことをする気も起きなかった。

 もう二度と立ち上がれないんじゃないかってくらいに、心が重かった。

 でもこのとき、弘斗は、私の比ではないくらい、重いものを抱え込んでいたのだ。