「よかった。何も思われてなかったらどうしようと思った」

 弘斗はホッとした表情で言った。

 何も思ってないような男子と二人きりで何回も出かけたりしない。でも、それはきっと弘斗だって一緒だ。

 今、客観的に思い返すと、二人ともバカみたいだった。

 気持ちを確かめ合うために、私たちはすごく遠回りをしていたような気がする。

 でも、その遠回りも、恋の楽しみ方の一つなのだろう。

「じゃあ、僕と、付き合ってくれますか?」

 さっきよりは少し余裕のある声で、弘斗が言った。

「はい。よろしくお願いします」

 私は頭を下げて答える。照れくさくて、つい敬語になってしまう。

 こうして、私は弘斗の彼女になった。

 私の初恋は、無事に実った。



 あのとき勇気を出して想いを伝えて、本当によかったなって思います。

 でも、ちょっと後悔もしています。幸せを知ってしまって、余計に死ぬのが怖くなってしまったから。



 胸の痛みが、一段と強くなる。

 私と同じだ。

 弘斗を好きになって、弘斗に好きになってもらって、私はとても幸せだった。

 でも、今はこんなにも悲しいし、苦しい。

 私たちは、恋をしない方がよかったのだろうか――。

 幸せと不幸せの総量なんて比べようがないし、そもそも比べてみて答えが出るような問題でもない。