弘斗が告白してくれたのは、私たちが出会ってから、半年くらいが経過した秋のことだよね。

 実は私も、クリスマスに告白しよう、という決意をひそかに固めていたのだけど、弘斗はたぶんそのことを知らない。

 偶然、学校から帰るタイミングが一緒になって、駅まで二人で歩いていたときだった。

「松戸さんに聞いてほしいことがあるんだけど」

 なんでもなさそうな口調で弘斗は言った。このときの弘斗はまだ、私のことを松戸さん、と苗字で呼んでいたっけ。私も弘斗のことを筒木くん、って呼んでいた。懐かしいね。

「うん。何?」

 当然、告白だなんて思わなくて、心の準備もできていなかった。

 だって、何の変哲もない、ただの学校からの帰り道だよ?

 綺麗な夜景の見える高級レストランでも、夕日の沈んでいくロマンチックな海岸でも、ましてや、二人が肩を寄せ合って座る公園のベンチですらなくて、学校から駅までの間にある歩道で。

「松戸さんのことが……好きなんだけど」

 弘斗はそう言った。

「……え?」

 私は立ち止まった。同じように弘斗も立ち止まる。

 数秒の沈黙。私は視界の端に弘斗を捉えながら、前を向いていた。とても彼の方を向ける状態ではない。

「えっと……松戸さんのことが、好きです」

 さっきよりもはっきりした声で、弘斗は繰り返した。珍しく、緊張をはらんだ声だった。