夏休みよ、早く終われ、と学生にあるまじき願いを掲げながら、私は宿題をそこそこ真面目にこなしつつ、全体的に堕落した生活を送っていた。

 スマホで弘斗に送るメッセージを入力し、あとは送信ボタンを押すだけ、というところまできておいて、数分間にらめっこしたのち、全文削除。そんなことを何度も繰り返す。

 どうしても弘斗に会いたくなってしまったら、水族館に出かけたときに購入したお揃いのキーホルダーを眺めたり、撮った写真を見返したりしてにやにやする。

 そんなことをしたって、余計に会いたくなるだけなんだけど。

 私は完全に、恋する乙女になっていた。

 会えない日々が、こんなにも苦しいなんて、恋をする前の私は想像してもみなかった。

 だから、それから一週間もしないうちに弘斗に会えたのは、幸運以外の何物でもない。

 それは、駅の近くにある大型デパートへ、コンタクトレンズを買いに来ていたときだった。



 その日の私は、Tシャツにジーパンというラフな格好だった。髪も寝ぐせが目立たないように、後ろで簡単に縛っただけ。女子力低めのスタイル。

「松戸さん?」

 声をかけられ、驚いて振り向くと、そこには弘斗が立っていた。

 私は何も言えないまま、自分の適当極まりないファッションに気づいて顔が熱くなった。

 違うの。これは休みの日だからであって、誰かと会うんだったら、もうちょっとちゃんとした格好をして外出するの。

 何を言っても言い訳がましく聞こえてしまうだろう。まずは現状を受け入れるしかない。

 面倒くさくなって一番上にあった服を選んだ今朝の自分を呪った。ジャージではなかったことが唯一の救いだ。