水族館で、色々な海の生き物を見て回った。魚はもちろん、ヒトデやクラゲ、イルカのショーなんかも見た。
手と手が触れそうになって、慌てて引っ込めたり、弘斗に「そういえば、そのワンピース、似合ってるね」と言ってもらって舞い上がったりしながらで、あんまりよく覚えてないけれど。
目的のペンギンも含め、一通り館内を見終わった私たちは、出口の近くにある売店を見ていた。
水族館限定グッズと銘打って、なかなか強気の値段設定。お菓子や大きなぬいぐるみなど、様々な商品が所せましと並んでいる。
好きな人と一緒にいる幸福感と、もうすぐ別れの時間がやってきてしまうという寂寥感の入り混じった、複雑な気分で店内を闊歩していると、可愛いキーホルダーが目に入った。
手のひらサイズに小さくなったペンギンが、つぶらな瞳でこちらを見つめている。スクールバッグに付けたらいい感じになりそうな大きさだった。
「ねえ、せっかくだから、これ一緒に買おうよ」
今考えると、ずいぶん大胆なことを言ったように思う。
もしもあのとき断られていたら、しばらく立ち直れないくらい落ち込んでいたかもしれない。
でも弘斗は「ん、いいね。可愛い」と、快く私の提案を受け入れてくれた。いつだって、弘斗は優しい。その優しさが、私にだけずっと向けられていればいいのに、って思った。