そのあとも僕たちは、何度か二人で出かけました。

 水族館やカフェ、あと、美術館……はちょっと背伸びをしすぎたかな。退屈させてしまってたらごめんなさい。



 そんなことない。確かに、絵の良さはよくわからなかったけれど、どこに行くのも楽しかったよ。

 だって――好きな人と一緒だったから。

 高校に入って初めての夏休み。いつもは楽しみなはずの長期休暇なのに、その年は違った。

 夏休みに入ってしまうと、弘斗と長い間会えなくなってしまうから。

 だから私は一学期の終業式の日、勇気を振り絞って、弘斗を水族館に誘った。

 ペンギンが見たい、という、小学生みたいな理由で。

 女友達と行けばいいじゃん、って言われたときのために「みんな、部活とか旅行で日程が合わなくて……」という言い訳は用意していたんだけど、弘斗はあっさり「いいね。行こう」と答えてくれた。

「本当にいいの?」なんて、つい聞き返してしまったけど、弘斗は爽やかな笑顔で「うん。僕もペンギンは好きだし。可愛いよね」と言った。

 そのときの弘斗の表情は、今まで見たことないくらいの満面の笑みで、そのときは本気でペンギンに嫉妬しかけた。自分がペンギンを誘う口実にしたことは棚に上げて。

 あのときの弘斗の笑顔の理由が、ペンギンだけじゃなければいいな、なんて、今更ながら思う。