駅前のコンビニで私はミルクティーを、弘斗は緑茶を買って、近くのベンチに座って飲みながら、少しだけ話をした。
別れの時間を遠ざけようと、私は紙パックに入ったミルクティーを、わざと少しずつ飲んだ。ミルクティーがなくなったあとも、ストローを口にくわえて飲むふりをした。
飲むのにどんだけ時間かかってんだ、なんて思われてしまったかもしれない。自分でもバカみたいだと思う。
それはそれで、いい思い出になったような気もする。
お互いに家が逆方向だったので、駅のホームで弘斗と別れる。
「また、学校で」
「うん。じゃあね」
短いあいさつを交わして、私たちはそれぞれ別の電車に乗った。
帰りの電車に揺られながら、弘斗に会いたくなった。
さっきまで一緒にいたはずなのに、話したかったことが、そのときになってたくさん出てきた。自分で思っていたよりも緊張していたみたいだ。
スマホにメッセージが届いた。差出人の名前を確認して、心臓が跳ねる。
今日は楽しかった。ありがとう。
そんな素っ気ない文章でさえ、私の胸を温かくする。
悩みに悩んで、結局私も、素っ気ない文章を返す。それに加えて、端に小さくハートの描かれた犬のスタンプを送った。それが、私のできる精いっぱいだった。
二人で出かけた次の週も、私と弘斗の関係に変化はなかった。
適度な距離感を保ちながら、話したり話さなかったり。他のクラスメイトを交えて雑談をしたりもしたけど、二人で映画に行ったことについては、一切会話に登場しなかった。
なかったことにされたみたいでちょっぴりさみしい気持ちと、二人だけの秘密になっているような、幸福な気持ちがせめぎ合う。
今思い返すと、あのときの私たちは、どうしようもなく子供で、とても愛おしかった。