一緒に映画を観れて、すごく楽しかったです。……って、なんか小学生の作文みたいだね。
あのときの映画の半券はもちろん、帰りに飲み物を買うために寄ったコンビニのレシートもとってあります。引いたかな。
引いた。でも、私もとってあるから、何も言えないけどね。
涙がこぼれないように、ぎゅっと唇を噛み締めた。
思い出が波となって、押し寄せてくる。
その波が、私と弘斗の思い出を、全部さらっていってしまうような気がして、反射的に胸を押さえた。
映画からの帰り道。感想を言い合いながら歩く私たちの長い影が、東に伸びていた。
本当は、もっと弘斗と一緒にいたかったのだけれど、それを直接言えるような私じゃなかったから「この後、どうしよっか」なんて言って、相手に判断をゆだねてしまった。
その言葉ですら、私の本音が、好きな気持ちがバレてしまったらどうしよう、って思いながらの発言だった。
弘斗は「喉乾いたから、ちょっとコンビニ寄ってもいい?」と返してきて、それに対して「うん。私も喉乾いたから、行こ」と、私は答えた。
このとき「それならカフェにでも行かない?」って言っておけばよかったと、帰ってから猛省した。そうすれば、もう少し一緒にいれたのに、って。