部屋には一切の変化がない。

二人が黙ってしまえば全くの無音で、黒井君は動かないし喋らないし、まるで時間が止まってしまったようだ。


無限にも感じるこの時間に、たまらず声を上げる。

「夢、だよね?」

「……どうだろう」


どうだろうって……

何それ。

現実ではありえないのだし、夢以外に何があるのだ。


"現実ではありえない"

もう一度心の中で繰り返す。

現実ではありえない。だけど、夢だと言い切るにも少し違和感があった。


黒井君はようやく私から視線を外し、腕を組んで何やら考えているようだった。


この部屋について、ねえ。


真っ白な変化の無い空間に表情を変えない黒井君と二人。

無意識に作り出したものだとしても、我ながら酷い想像力だ。

夢にしては乏しくてあまりにも夢がない。


「俺は、この部屋は……」


黒井君は横を向いたまま再び話し始めた。

その刹那、何の前触れもなく意識がぷつりと途切れた。