そりゃ、そうだ。

黒井君はあくまで夢の中の住人然としていた。


改めて黒井君をよく見てみる。


肌は白くて体格はスラリと長く、やや痩せ型。

学校指定の黒のセーターは少しゆったりめではあるけど妙に着こなしていて、全体的には少し不健康そうな印象が持たれた。

真っ黒で少し長めの前髪から覗く、髪と同じ色の瞳と再び視線がぶつかり合う。


……黒井君ってこんな顔整ってた感じだったけ?


なんて、夢だと分かっていながらも、男子をこんなに見つめることなんてなかったから、やっぱり少し照れる。

再び熱を持った頬をごまかすように目線を逸らした。


「でも、何で黒井君なんだろうね」

「さあ」


黒井君は相変わらずの無表情で、リピート再生のようにさっきと同じように答える。

全く不毛な会話だった。


記憶の中から黒井洸の情報をかき集める。


1、2年生の頃はクラスが違い、その存在を知ったのは2ヶ月前の4月。

第一印象は大人しそうな人だな、という程度。

今もその印象からほとんど変わりはない。

大人しそうで、何となく少し冷めてるなという感じ。