人が色を認識するためには3つの要素が必要になる。

光を出す元となる光源、その光が当たる物体、そしてそれを読み取る視覚。


この部屋には光源がない。

光源となる照明や、光の入る窓や扉がないのだ。

仮にそのような白い立方体の中に閉じ込められていた場合、視界は真っ暗で何も見えないはず。

なのに、私は今物を見ることができるし、この部屋が白色であることが分かる。


こんなこと、現実にあるはずがない。

そもそも、この扉の無い部屋に私はどこから入れられた?どこから見られている?空気は?空調は?

どれもこれも現実的では無い。

扉の無い部屋に閉じ込められるフィクションは聞いたことがあるけれど、現実的にはありえないはずだ。

いくつもの疑問は徐々に確信へと変わっていった。


全てのことから私の下した結論は、

「夢……だよね」


授業中に居眠りなんてしたことがなかったけど、これが一番腑に落ちる答えだった。


「夢か。
……うんうん、夢だ。夢夢。
なんだ、変なのー」


こんなに鮮明で、具体的な夢は初めてだ。

立ち上がって伸びをしてみる。

とても夢とは思えないような感覚。