小学校低学年の時、父と離婚した母はシングルマザーになった。

父は少々特殊な仕事をしていて、そのことで揉め、離婚ということになった。

私は、元々父と母は合わなかったのだと思う。


父は自由な人で、母は完璧主義者。

母は高学歴で一流企業に勤め、今もバリバリのキャリアウーマンとして夜遅くまで働いている。

父は専門学校を出て、アルバイトをしながら細々と個人事業主として働いていた。

母は完璧ではない父を見下している所があった。

自分がいなくては父は生きていけないのだと信じていた。


……父が仕事で成功するまでは。


「今日は出先から直帰になったの」

麦茶を飲み終えたコップに麦茶を注ぎながら、母が話し始める。

母の動きには無駄が無い。

何でもチャキチャキ動いて、家にいても、多分会社でも、どこにいても仕事をしているみたいにしている。

「そうなんだ」


ズズズ。

注ぎ終わった麦茶を飲む音。


テレビも付いていない二人きりの食卓は静かで、一人の時と大差無く、あの白い部屋を思わせた。