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飛行機の中で、時間ギリギリにシートに着いた私は胸に手を当て息を整える。
出発の朝だというのに、やはり私は私のままだと見送りに来てくれた友人たちも呆れていた。


滑走路へと移動し始めたのか、窓の外の景色が動き始める。
携帯をフライトモードにしなければと、手荷物から出した途端だった。
短い振動音が、メッセージの受信を知らせた。



「……亮輔」



液晶画面に表れた彼の名前とメッセージに、ぶわりと涙が溢れ、唇が戦慄いた。


“ずっと待ってるから”
“心配せずに、行ってこい”


酷いよ。
せっかく昨日は、最後まで我慢したのに。


口許を覆った手の中で、堪えきれずに嗚咽が零れた。