映画館を出て近くのカフェに入った。
頼むのはランチセット千二百円。
こういう気の遣い方はほんと、宗正さんがモテるポイントなんだと思う。

「面白かったね」

「……。
あ、うん、そうだね」

ランチのサラダを食べながらぼーっと考えていたので、慌てて返事をしてしまう。

……どうして宗正さんはこの映画に私を誘ったんだろ。
やっぱり現実を見せつけて諦めさせるため?

目の前でにこにこ笑っている宗正さんがそんなことを考えているなんて思いたくないが。


ランチがすんでファッションビルをうろうろ。
買う気はないが洋服店を覗いて回る。

「あ、こんなの似合うんじゃないかな」

ラックから選び出した服をとっかえひっかえ私に当てては宗正さんはご満悦だ。

洋服店まわりは宗正さんにとって市場調査を兼ねていて仕事の一環でもある。
やはり仕事外にひとりでレディースファッションのお店に入るのはハードルが高いらしい。

「詩乃と一緒だと気兼ねなく見て回れるから助かるー」

嬉しそうに宗正さんが笑い、私も笑ってしまう。
仕事だからって言ってるけど、本当は好きなんじゃないかなーって思う。

「アクセサリーも見ようよ」

軽く引きずられるように、目に付いたアクセサリー店に連れて行かれた。

「詩乃ってピアス?」

「イヤリング。
その、……穴をあけるの怖くて」

意味もなく耳のイヤリングをさわりながら答えてしまう。

イヤリングよりピアスの方が安くて可愛いのが多いから、一度はピアッサーを買ってチャレンジしようとしたのだ。
けれど耳には当てたものの恐怖には勝てず、そのまま家のどこかに眠っている。

「……ぷっ。
そういうの、詩乃らしい」

いま吹き出しかけましたよね?

そういうのはちょっとムッとする。

「……大河もやってみればいいんだよ」

ぷーっと頬を膨らませてジト目で睨んだら、宗正さんはわたわたと慌てだした。

「ごめんごめん。
イヤリング、気に入るのあったら買ってあげるから、許して?」

急いで拝まれると悪い気はしない。

「……許す」

「よかったー」

ぱーっとみるみるうちに顔が輝き、見えないしっぽがふりふりしている宗正さんは可愛い。
というか私、宗正さんに甘くない?

お店の中を見ていると指環のコーナーが目に入ってきた。