おじさんは予防線にはなりません

いつもにこにこ笑っている宗正さんは、本当はいい人だっていまは知っている。

「……考えておきます」

「羽坂ちゃんはいつもそれだよね」

少しだけ悲しそうに笑った宗正さんに針が刺さったように胸がチクリと痛んだ。

何度か食事やデートに誘われたが、一度だって応えたことはない。
それは宗正さんにとても失礼だと思うから。

「羽坂ちゃん」

食べ終わって休憩室の席を立つと、ぐいっと宗正さんの顔が寄ってきた。
なにをされるのか怖くて目を閉じたけれど。

「ストッキング、伝線してるよ」

こそっと耳元で呟かれ、目を開けたらいたずらっ子のように宗正さんが笑っていた。
慌てて足を見ると、右足の膝下から確かに伝線していた。

「あ、ありがとうございます」

一気に顔が熱を持つ。
こんなことを男性に指摘されるなんて恥ずかしい。

「いえいえ」

「ちょっとコンビニ、行ってきます」

「あ、オレも行くよ」

さっきコンビニに行ってきたばかりだというのに、宗正さんもついてくる。

「食後のコーヒー、飲みたくなってさ」

器用にぱちんとウィンクされ、社内の自販機でいいんじゃないかって言葉は飲み込んでおいた。


コンビニでストッキングを買うついでに小腹が空いたとき用のお菓子を見る。
アメのコーナーでパインアメと同じ会社から出ている、ラムネのアメを見つけた。

……もしかして、期間限定なのかな。

前にスモモのアメが期間限定なのだと池松さんは嬉しそうだった。
教えてあげたら喜んでくれる……?

「こんなの好きなんだ」

いつの間にか後ろに立っていた宗正さんにひょいっとラムネアメの袋を奪われた。

「ええ、まあ」

「へぇ、そうなんだ。
そういえば知ってる?
池松係長、しょっちゅうパインアメ舐めてるの」

知っているに決まっている。
池松さんはよく、私にパインアメをくれるんだから。

「なんかこう、おっさん臭いよね。
昭和って感じで。
いや、実際、おっさんなんだけど」

次の瞬間、持っていたストッキングで宗正さんを叩いていた。
唖然としている宗正さんを無視してその手からラムネアメを奪い、レジへと向かう。

「なに怒ってんの」

「……」

「ねえ!」