急に目の前が暗くなったと思ったら、池松さんが至近距離に立っていた。
どうしてかとか考える間もなく、その胸に顔が押しつけられる。
なにが起こっているのかわからなくて混乱していると、後ろあたまに回った池松さんの手がそっと、私の髪を撫でた。
「無理、しなくていいんだぞ」
とうとう涙がぽろりと落ちる。
そのまま、池松さんの胸で思いっきり泣いた。
「落ち着いたか」
「はい。
ありがとうございました」
私が泣きやむとポケットからハンカチを出した池松さんだけど、あまりのしわしわ具合にまたポケットに引っ込める。
そういうのはなんだかおかしくて、思わずくすりと笑いが漏れた。
「ちょっと待ってろ。
本多さんに話して、病院連れて行ってやるから」
私の頬を見た池松さんの顔が痛そうに歪む。
そんなに派手に腫れているんだろうか。
「ビンタくらいで大げさですよ」
「爪が当たったんじゃないか。
ミミズ腫れができてる。
痕になったら困るだろ」
そっと池松さんの手が私の頬にふれ、びくりと身体が震えてしまう。
そろそろと見上げると、レンズ越しに目のあった池松さんは手を引っ込めた。
「どうかしたのか?」
眼鏡の向こうから池松さんは不思議そうに見ているが、うまく言葉にできない。
「ちょっと、傷に、しみて」
「それは悪かった。
とにかくちょっと待ってろ。
病院、連れて行ってやるから」
「……はい」
池松さんがいなくなり、ずるずると背中が壁を滑ってその場に座り込んだ。
……なん、で。
どう、して。
どきどきと心臓が妙に自己主張をしている。
ビンタされていない方の頬も熱い。
池松さんにふれられるのが、怖かった。
まるでそこから……この感情を知られてしまいそうで。
すぐに池松さんは戻ってきた。
「具合でも悪いのか」
座り込んでいた私を見て、池松さんの眉根が寄った。
「……なんだか気が抜けて、腰が抜けちゃって」
できるだけ平気な顔を作って立ち上がろうとすると、池松さんが手を貸してくれる。
「……ありがとうございます」
そういう優しさがいまはつらかった。
気持ちを自覚したいまは。
「じゃあ、病院行くぞ」
どうしてかとか考える間もなく、その胸に顔が押しつけられる。
なにが起こっているのかわからなくて混乱していると、後ろあたまに回った池松さんの手がそっと、私の髪を撫でた。
「無理、しなくていいんだぞ」
とうとう涙がぽろりと落ちる。
そのまま、池松さんの胸で思いっきり泣いた。
「落ち着いたか」
「はい。
ありがとうございました」
私が泣きやむとポケットからハンカチを出した池松さんだけど、あまりのしわしわ具合にまたポケットに引っ込める。
そういうのはなんだかおかしくて、思わずくすりと笑いが漏れた。
「ちょっと待ってろ。
本多さんに話して、病院連れて行ってやるから」
私の頬を見た池松さんの顔が痛そうに歪む。
そんなに派手に腫れているんだろうか。
「ビンタくらいで大げさですよ」
「爪が当たったんじゃないか。
ミミズ腫れができてる。
痕になったら困るだろ」
そっと池松さんの手が私の頬にふれ、びくりと身体が震えてしまう。
そろそろと見上げると、レンズ越しに目のあった池松さんは手を引っ込めた。
「どうかしたのか?」
眼鏡の向こうから池松さんは不思議そうに見ているが、うまく言葉にできない。
「ちょっと、傷に、しみて」
「それは悪かった。
とにかくちょっと待ってろ。
病院、連れて行ってやるから」
「……はい」
池松さんがいなくなり、ずるずると背中が壁を滑ってその場に座り込んだ。
……なん、で。
どう、して。
どきどきと心臓が妙に自己主張をしている。
ビンタされていない方の頬も熱い。
池松さんにふれられるのが、怖かった。
まるでそこから……この感情を知られてしまいそうで。
すぐに池松さんは戻ってきた。
「具合でも悪いのか」
座り込んでいた私を見て、池松さんの眉根が寄った。
「……なんだか気が抜けて、腰が抜けちゃって」
できるだけ平気な顔を作って立ち上がろうとすると、池松さんが手を貸してくれる。
「……ありがとうございます」
そういう優しさがいまはつらかった。
気持ちを自覚したいまは。
「じゃあ、病院行くぞ」