三つ目は白のトップスにオレンジのフレアスカート、黒のカーディジャケット。

「スカートは派手だが、ジャケットが黒だからそれほど主張しない。
靴も黒で合わせれば問題ない」

どれも自分じゃ選ばなかっただろうし、それに池松さんのセンスも悪くない。
さすが、仕入れをやっているだけあるな。

散々悩んで、社割で買えるんだしって結局、三セットお買い上げした。
これに手持ちのアイテムをプラスしてこの夏は回していけそうだ。

「ありがとうございました」

私があたまを下げると、池松さんはくいっと眼鏡を押し上げた。

「よせや。
それよりほんとに、こんなおじさんが選んだのでよかったのかよ」

「はい。
池松さんに選んでもらってよかったです」

ひさしぶりに新しい洋服がお安くたくさん買えて、満足だった。
選んでくれた池松さんには近いうちに、ランチの分もあわせてお礼しないと。



がさがさとプリントを折りながら考える。

……お礼って、なにがいいんだろ。

手作りクッキー……とか一瞬考えたけど、高校生じゃないんだしと打ち消した。

無難なのはハンカチ、靴下、ネクタイあたり。

ネクタイとかいいなって思ったけど、ほかの女性からもらったネクタイを旦那さんが締めるのは、奥さんはよく思わないかな。
それに、ネクタイを送るってなにか意味があったような……。

「……さか。
羽坂」

「あっ、はい!」

ぼーっと考え込んでいたところに突然、声をかけられ、焦って返事をしてしまう。

「なにぼーっとしてるんだ?」

声のした方に視線を向けると、池松さんがにやにや笑いながら立っていた。

「……別に」

呼ばれているのに気づかないほど、考えていたなんて恥ずかしくて頬が熱くなる。

「それ、もう終わりそうだな」

私の机の上には先日、封筒詰めを頼まれたプリントが載っていた。
残りはもうさほどなく、今日中には終わりそうだ。

「そうですね。
もしかして、急ぎましたか?」

急がないから暇なときにやってくれとは言われていたけれど、本当は期限があったんだろうか。

「いや、助かった。
ありがとう。
それでだな、明日、お礼に一緒に昼メシ食いに行かないか」

そういえば封筒詰めを頼まれたとき、お礼にステーキのおいしいお店に連れて行ってくれるとか言っていたような。
でもほんとにいいのかな。