そもそも、急ぎの用件なら速達か、割高でも日時指定ができる宅配便で出すべきなのだ。
けれど昨日頼まれたのは、「これ、送っといて」それだけ。
追跡サービスのあるメール便で送っておいて正解だった。
ここでの仕事にも多少、慣れてきたってことかな。

通常業務をこなしつつ、隙間時間で池松さんから預かったプリントを封筒詰めしていく。

定時になると私の仕事は終了。
どうしても今日中に終わらせなきゃいけない仕事がない限り、残業はしない。
残業分の時給は魅力的だけど、私が残業していると外川部長がしぶーい顔になるので。
私の残業代は余分な経費だもんね。

帰り支度をして今日は、売り場をうろうろする。
社割で買えるらしいので、せっかくレディースファッション部にいるんだから夏物を少し買いたい。

たまにはイメチェンしてみたくて、職場の女性たちをお手本に……と思ったものの、あの奇抜なファッションが私に似合うとは思えない。

まだ残業している社員さんたちの邪魔にならないように気を遣いながら見て回るけど、なかなか決められなかった。

「なんだ、まだいたのか」

「ひっ」

突然、後ろから声をかけられてこわごわ振り返ると、池松さんが少し驚いた顔で立っていた。

「どうした?」

「……ちょっと驚いて」

……だって池松さん、気配を感じなかったんだもん。

「残業か?
ん?
でもなんで売り場?」

不思議そうに首を傾け、無意識なのかなにかを考えるように池松さんは後頭部を掻いた。

「……夏用の服を買おうと思って。
でも、なかなか決まらなくてですね……」

「ふーん」

姿勢を元に戻すと、視線が斜め上を向く。
そっちになにかあるのかと見てみたけれど、なにもなかった。

「よかったら俺が、選んでやろうか。
……なんてな」

池松さんはくいっと眼鏡をあげ、腕を組んで完全に横を向いてしまった。
いや、そんなふうに照れて冗談にして誤魔化すなら、言わないで欲しい。

――そういうのはかなり、可愛いので。

「じゃ、じゃあ。
お願いしてもいいですか」

自分でもなにを言っているんだろうとは思う。
でも、そうでもしないと決まらないまま買わないで終わりそうだし、それに。
池松さんがどんな服を私に選んでくれるか興味があった。

「は?
俺は冗談のつもりだったんだが」

組んだ腕をほどき、池松さんは信じられないものでも見るかのように、まじまじと私を見てくる。

「ここに勤めてるんだから、それなりにセンス、ありますよね?
信用しています」

「ほんとにいいのか?」