披露宴は色打ち掛けにお色直し。

いいな、ああいうの。

「やっぱり詩乃も、ああいうのが着たかったか」

私に視線を向けないまま、ぼそっと和佳さんが呟いた。
もしかして、顔に出ていたのかな。
隠していたつもりだったんだけど。

「そう、ですね。
でもいいって言ったのは私なので、和佳さんが気にすることないですよ」

「……挙げるか、式」

「はい?」

視線は中央のふたりに向けたまま、和佳さんはちっともこっちを見ないから、表情は少しもわからない。

「子供が生まれて、落ち着いたらになるが。
……式を挙げよう」

伸びてきた手が、私の手を掴む。
眼鏡をあげた、私にはそこしか見えない池松さんの耳は赤くなっていた。

「……はい」

こんなふうに気を遣ってくれる和佳さんはきっと、私と子供を幸せにしてくれる。
だから私も、和佳さんと子供を幸せにする。


【終】