話を美鈴ちゃんに戻そう。

美鈴ちゃんは嫌われている。

お金持ちを鼻にかけてすぐいばるし、人の悪い所を見つけるのが上手だ。命令ばかりで自分が悪くても絶対謝らない。東京のいとこから可愛いシールを送ってもらい、それをアイテムにしてクラスの子に配って言う事をきかせている。

嫌われているけど女王様だ。

堂々と大きな声でいじわるをするので、その迫力に負けて誰も何も言わなかった。中学年にもなるとあまり変なのに関わらない方がいいと感じて、美鈴ちゃんの周りにはあまり普通の子達は近寄らない。でも、美鈴ちゃんの迫力に負けているのか、シールが欲しいのか、お屋敷に呼んでもらってゴージャスなおやつが欲しいのか、取り巻きのようないじわるな子達がいつもいて、その子たちといつも遊んでいた。

クラス替えの紙を見ると、その取り巻き達と美鈴ちゃんは離れていた。これから美鈴ちゃんは誰と一緒に過ごすんだろう。取り巻きになりそうな子はいるだろうか?私はじっくりクラスの子の名前をみるけれど、どちらかと言えば女子は大人しい子が多くて、いじわるな子は美鈴ちゃんだけだった。できればひとりでいばって欲しいなぁ。ひとりなら誰も相手をしなかったら問題ないよね。

能天気な私はそう思い、新しいクラスに入って前のクラスの子達と話をしていたら「あんたが木全 杏(きまた あんず)」って、私の名前を吐き捨てるように言ってる人がいて、ムッとしながらそっちを見ると、腕を組んだ上から目線で噂の美鈴ちゃんが私を見ていた。