お姉ちゃんの機嫌が悪い時、お父さんはたまに私とお姉ちゃんとモモちゃんを正座させて話をする。
『うちは貧乏ではない。だから堂々としてなさい。
給食費は払ってるし家賃も払ってる。水道光熱費はたまに払い忘れる時もあるけれど支払っている。税金も払ってる。町内会費も払ってるし班長さんも回って来たらきちんとこなす。コミ捨て場のカラスも追い払ってる。
服は優しい人達が『くれる』というから、ありがたくもらっている。貧乏ではないけど節約はしている。ジュースより手作り麦茶が愛情と栄養に溢れている。主食と副食で生きていける。本は図書館で読み放題で買うより場所を取らない。お風呂だって毎日入ってる。何が不満なんだい?』
優しい声でお父さんは私達に言うので、私達は黙ってしまう。
お姉ちゃんは言いたいことがいっぱいあるけれど、お父さんにそう言われると何も言えなくなってしまう。
私達は優しくて面白いお父さんが大好きだった。
頭のいいお姉ちゃんなら、もしかしたらお父さんに勝てたかもしれないけれど、お姉ちゃんはわかっていたのかな。
世の中には金持ちとそうじゃない人達がいて
私達はそうじゃない人達だけど、それを言ってもどうにもならないから、たまに叫んで終わらせている。だから、あきらめていたのかもしれない。
かもしれないばかりだけれど、そんな生活を送っていた。
つまり美鈴ちゃんの家はお金持ちで私の家は貧乏だから、正反対である。
そして意地悪な美鈴ちゃんの噂だけでも怖い私は、一緒のクラスになって大ショック。このままスーッとすれ違って、知らん顔で終わって欲しかったのだけど、そうはならなかった。