「杏は私の子です。今までありがとうございました」
「帰ろう杏。東京にマンション買ったよ、杏の部屋もあるよ」
おじさんとおばさんが私に優しく言うと、お姉ちゃんは私を寂しそうに見る。そんな顔で見ないで欲しい。

本当のお母さんとお父さん。私はお金持ちの娘だ。カナダに店があるって言ったから、もしかしたらカナダにも行けるかもしれない。本当の妹もいるんだ。憧れていた自分の部屋。そっちに行ったらおやつも食べれるかな。焼肉屋さんにも行けるかも、転校したら美鈴ちゃんと離れられるラッキー。おやつだって食べ放題かもね。

私は天井を見上げてギュッと目を閉じる。そしてパッと広げるけど……やっぱりしょぼい壺が並んでいるだけで、何も変わらない。
魔法使いさん。違うんだよ、こんな感じで金持ちになりたいんじゃなくて、今の家族で金持ちになりたかっただけなんだよ。

バチが当たったのかなぁ。

「私だけ、ここの家族じゃなかったんだね」
空気が重かったから、ウケる感じで自分で言うけど、言ってから泣きそうになったから失敗した。榊原君ならこんな時もきっと笑わせてくれるんだろうな。大きな涙がこぼれそうになった時、もっともっと大きな涙をボロボロ流して「うぁーん」とお姉ちゃんが私に抱きついてきた。

「杏は私の妹だよ。どこにも行っちゃダメ」
ぎゅーっと抱きしめて泣いて叫ぶと、今度はモモちゃんも私の背中にしがみついて泣き出した「あんずおねーちゃーん」って大泣きするので、なんだかやっぱり私も泣きたくなって三姉妹で泣き出した。近所から苦情が出るくらいの大泣きで、児童虐待ってやつ?と間違われそうなくらいの大泣きだった。