「お義姉さんすいません、長い間迷惑かけてすいません」
苦しそうにおじさんが言ったら、お母さんの顔がピクピク引きつっていた。お父さんはお母さんを後ろから押さえつける。
「とりあえず、一回落ち着いてから話をしよう。みんなで家に戻ろう」お父さんの言葉にお母さんは私に近寄って肩を抱きしめた。「帰ろうか」ってお母さんは言う。怒っているはずなのに私には泣きそうな顔に見えるのはなぜだろう。
みんなでおまわりさんにお礼を言ってから家に帰る。おじさんの大きな車で移動すると思ったけど、お母さんが『絶対乗らない』と断ったから、お母さんとお父さんと歩いて帰る。家に帰る前にモモちゃんの保育所に寄ると、モモちゃんはお父さんとお母さんと私が一気に迎えに来てテンションが上がって大喜びだった。

ボロい団地の入口に大きな車があって、おじさんとおばさんが待っていた。
本当のお父さんとお母さん?美鈴ちゃんじゃなくて私が本当の子じゃなかったの?ぼんやりとした嫌な予感がモヤーっと私の身体に入ってくるみたいで、怖くなってお父さんの大きな手をさがしてギュッと握った。お父さんは私の手を握り返してくれた。とっても温かくてちょっとだけ落ち着いた。

家の中にゾロゾロ入ると、テスト期間ってやつで早く帰ってたお姉ちゃんがビックリしていた。お母さんはお姉ちゃんとモモちゃんにも話を聞かせるらしい。モモちゃんは綺麗なおばさんに「かわいいね」って言われて照れていたけど、その照れた可愛い顔はだんだん凶暴な脱走したサルみたいな顔になってしまう。小さなモモちゃんは話を聞いてどこまでわかっているのだろう?本人の私でもよくわかんないよ。きっとわからないけど、お母さんの怒った顔とか私を連れて行くとか話を聞いて怒っているのかな。お姉ちゃんは固まっていた。

おじさんとおばさんはお金持ちになっていた。モモちゃんぐらいの娘もいる。私の本当の妹になるのかな。向こうの店は人にまかせて、しばらくはカナダと日本を行ったり来たりするけど、最終的には日本に戻るそうだ。おじさんの借金のせいでうちはめちゃ貧乏だったけど、その借金も全部返してくれる。払い終わった分も当たり前だけど返してくれる。お父さんには新しいお店を手伝ってほしいとかも言っていて……。

そして、一番大切な話は、私を連れて帰りたいって話だった。