お父さんは目を丸くしてビックリしていた。おじさんも立ち上がりお父さんに頭を下げる。
「もう大丈夫。あれからそこそこ儲けて今はカナダに3軒店を出してる」

「店?って?」

「あ、知らなかった?ごめん。俺、あれから都内のラーメン屋で修行して、日本で店を出しても売れないからカナダに行ったんだ」

「カナダ?」

「そう。バンクーバーに近い場所で最初はワゴン車の移動販売だったけど、評判が良くて知らないうちに儲かっちゃって大金持ち。今度六本木に逆輸入で店出すからこっち来た。ネットニュースに出たけど見てない?」

「うちネット繋がってないから」
悲しそうにお父さんはそう言った。

「それで、杏を迎えに来た。今までありがとう」
「本当にありがとうございます」
おばさんも一緒に頭を下げる。

「本当に兄さんにはお世話になってしまった。杏、僕たちが本当のお母さんとおとう……」

「ざっけんなこのヤロー!!!」

おじさんの言葉は最後まで聞くことはできなかった。なぜならお腹にグーでパンチが入ったからだ。おじさんは何度も咳をしてのどをゼロゼロしている。おばさんは心配そうにおじさんの背中をさすって、暴力から市民を守るはずのおまわりさんは、超素速い動きのお母さんを驚いた顔で見ていた。

「おっ……おかーさん」
「お母さん」いつの間に?

「迎えに来た?どの口が言ってんだ?はぁ?」
お店の制服姿で私達の前にウルトラマンみたいに現れて、おじさんをパンチしてソファに沈めてしまった。
まだ暴れたりないのかお母さんは近くのパイプ椅子を持って振り回そうとしてたので、おまわりさんは今度は全力で止めていた。お母さんはお姉ちゃんがキレた時の顔に似ていて、やっぱり親子だと妙に私は感心していた。