「部外者もいなくなったから、はっきりそっちの言い分があったら言いなさい」おまわりさんはまだちょっと怖い声を出して、おじさんとおばさんにそう言うと、おじさんは姿勢を直してサングラスをポケットに入れてから「この子は、僕達の娘なんです」と言い出した。

「違う。絶対違う、私のお父さんとお母さんはちゃんといるもん」
すがるようにおまわりさんに言うと、おまわりさんは優しい顔で「今、お父さんとお母さんが迎えに来るからね」って私の頭をポンポンしてから「ふざけんなお前ら!やっぱり誘拐犯だろ!」と大きな声でおじさんとおばさんを怒鳴っていた。優しいのか怖いのかわかんなくてヤダよー!

「違います本当なんです。杏は僕らの子供です」
「私の娘なんです」

どうして私を娘にしたいんだろう。美鈴ちゃんと間違ってない?誘拐するなら美鈴ちゃんでしょう。うちはお金がないから誘拐してもムダなんだけどなぁ。おまわりさんにまだ怒られてるおじさんをボーッと見ていたら、なんとなく誰かに似ているのが気になった。お笑い芸人かな?ちがうよね……あれ?しょぼんとした悲しそうな顔が誰かに似ているような……。

「杏!」
交番に飛び込んできたお父さんの顔を見て、やっとそこに座っているおじさんがお父さんに似ているのに気が付いた。

お父さんはおじさんを見て「浩介」って驚いて、おじさんはまた涙を浮かべてお父さんをジッと見ている。
浩介おじさん?私が生まれた時に借金を残して逃げてしまった浩介おじさんなの?うちが貧乏なのはその借金のせいだから、すっごい悪い人じゃん。

「お義兄さん、ご迷惑をおかけしました。杏を……杏を迎えに来ました」
おばさんが立ち上がってそう言うと、おじさんも「やっと迎えに来れました。今まで育ててくれてありがとう」って変な話をする。