「絶対ふしんしゃだよ!」
「早く先生に教えなきゃ!」
誘拐されたら大変だ。美和ちゃんと意味なく手足をバタバタさせてあせるけど美鈴ちゃんは知らん顔だ。知らん顔どころか目をキラキラさせておばさんを見ている。

「早く逃げよう」
半分泣きそうな顔で美和ちゃんが言うから、私も怖くなってうなずく。でも美鈴ちゃんは「会ってくる」って前に向かって歩き始めた。

「ダメだよ美鈴ちゃん!」
私は美鈴ちゃんの腕をつかんで引っ張った。悪い人だよ誘拐されちゃう。

「あれは私の本当のお母さんなの。ずっと私を捜してたの」
ほっぺたをピンクにして私を突き飛ばし、私は歩道に引っくり返った。
すると、その白いワンピースを着たおばさんが気付いたのかこちらに走って来た。さっきまでの暑さを忘れるくらい私の身体は冷たくなっている。
美鈴ちゃんは自分に気付いてくれたのが嬉しくて「おかーさーん」と叫びながらおばさんに向かって走り出す。

おばさんと美鈴ちゃんの距離が近くなる。おばさんの動きと一緒に大きな車が動き出す。

こっちに来る。

どうしよう。どうすればいいんだろう。
一生懸命考えるけど、声も出ないし身体も動かない。

美鈴ちゃんとおばさんが近くなる。
美鈴ちゃんはわざとらしく手を広げていた。おばさんと車が本当にこちらに近くなる。車の中にはサングラスをかけた男の人が乗っていて、おばさんも美鈴ちゃんに向かって手を広げている。おばさんのワンピースはシミひとつなく真っ白だ。アクセサリーをキラキラさせる、髪の毛もツヤツヤして肩のあたりでクルクルしている。本当にお金持ちっぽい。

やっぱり美鈴ちゃんって
めちゃくちゃお金持ちのお嬢様だったんだ。


そしてふたりは急接近して
おばさんの手が美鈴ちゃんの肩に触り