「お父さんは東京でIT企業の社長なの。早く迎えに来てくれないかなぁ本当のお父さんとお母さんに会いたい」

「東京の社長さんなの?さっき外国に住んでるって言ってたよね」

「うるさい!」

一度私に怒ってから、またハンカチを広げてほっぺたを拭いていた。涙は拭いてない。だって泣いてないもん。

「杏はいいね。貧乏だけど本当のお父さんとお母さんがいてさ」

「そうだね。お姉ちゃんも妹もいるからにぎやかで楽しいよ」
にぎやかすぎて家が狭い。授業で先生が教えてくれた【人口密度】というやつがめちゃ高い家だと思う。

「早くお母さん迎えに来てほしいなぁ」
空に向かって甘えた声を出す美鈴ちゃん。私も心から願ってあげる。

早く本物の美鈴ちゃんのお父さんとお母さんが迎えに来て、どこかへ行ってほしいなぁ。