「でも杏は無理しなくていいからね。無理して苦しくなってからでは遅いから」

「うん」

無理ってどこまでが無理なんだろう。
美鈴ちゃんの部下も家来も奴隷も嫌!って思ってた。絶対無理!って思っていたけど、おにぎり食べたらどうでもよくなってしまったから……よくわからないよ。悩んでいたらモモちゃんとお母さんがお風呂から上がってきて、お母さんは私に「冷める前に杏も入っちゃって」って言うから私は「うん」って返事した。お風呂でひとり考えよう。

するとお母さんは思い出したように私に言う。
「そういえば、杏のクラスに社長のお嬢さんがいるんだって?社長が『娘と仲良くしてくれてありがとう』ってお母さんに言ってた」

「えー!」
仲良くなんてしてないよ。奴隷にされてるんだよ。思いっきり嫌な顔をしてしまう。

「用事合って事務所に行ったら珍しく社長さんがいて、みんなの前で言われてお母さん驚いちゃった。ちょっと嬉しくて鼻高々だった」
私とは逆にお母さんは頬に手を当てうっとりしている。

「お母さん嬉しかったの?」

「偉い人に『ありがとう』言われたら嬉しいでしょう。杏が誰とでも仲良くでて嬉しいよ。レジ係の従業員に社長がそう言ったんだよ。驚きの大逆転でしょう」

「大逆転は違うんじゃない?」
お父さんがそう言って笑う。

「大逆転だよ。ありがとうね」
お母さんも笑ってる。