おにぎりを食べ終わってから、ふすまを開けてみんなそろってる茶の間に戻った。モモちゃんが「あんずおねーちゃーん」って抱きついてきたので抱き上げてほっぺたスリスリしてやった。のりたまの匂いがした。

その後
お母さんがモモちゃんとお風呂に入って、お姉ちゃんが私達の部屋に行き、私はお父さんとツーショットでお笑い番組を観て笑っていた。
お父さんはチラチラと私を見て、CMになった時「学校はどう?」って言ってきたので、私はビクッと身体を固くした。

「あんまり楽しくない」
正直にそう言うと、お父さんは「そっかー」って返事した。

学校は嫌いじゃない。勉強も嫌いじゃない。図工は大好きだし給食も美味しい。お母さんの料理よりたまに美味しい。明日は杏仁豆腐が出るから絶対行きたい。美鈴ちゃんに取られる前に食べてやる。席替えで隣の席になった榊原君が面白くて、よく話しかけてくれる。でも美鈴ちゃんがいるから楽しくない。

「嫌だったら、たまに休んでもいいからね」
お父さんはテレビを観ながらそう言った。

「うん」
なんだかその言葉が嬉しくて、私はポカポカ温かくなる。

「お父さんは?お仕事楽しい?」

「えーっ?そうだなぁ……楽しくはないなぁ」

「辞めちゃってもいいよ」
ドキドキしながらお父さんの返事を待ってしまう。お父さんもお母さんも美鈴ちゃんの会社を辞めてほしい。

「辞めたら生活できないから、大人はガマンする時はガマンするよ。だって家に帰れば有希も杏もモモがいるからさ、みんなの顔を見ると疲れが飛んでくからね」
くしゃっと笑って私の頭を乱暴に撫でるお父さん。お父さんの笑った顔が大好きだ。