家に帰ると帰りが遅くて怒られた。でも私のふてくされた泣き顔が迫力あったのか、そんなに強く怒られないで終わった。

もう嫌だ
ヤダヤダヤダ。
美鈴ちゃんの手下も部下も家来も奴隷も嫌だっ!

ご飯も食べずにひとり部屋に閉じこもっていると、小さなノックの音がしてスッと小さなおにぎりが部屋に転がり私の足元までやってきた。ラップに包まれた丸いおにぎりにはメモが貼りついている。

『お茶は取りに来なさい』お母さんの字だった。
『食べないと大きくならないぞ』お父さんの字だ。
『部屋に入りたいんだけどー』お姉ちゃんの字。
あと、ティアラを頭に飾ったゴージャスなお姫さまのイラストの下に『お姉ちゃん大好き』ってお父さんの字で翻訳されていた。

あーぁ

転がってきたおにぎりを一口食べたらしょっぱかった。私の涙の味ねって……超昔くさいセリフを言いたかったけど、ただたんにしょっぱかった。
お母さんのおにぎりはいつも塩気が多い。

ケーキ

食べさせたかったなぁ。

つぶれていても味は同じだから
もらって来たらよかったかも。

あれだけ泣いて怒ってたのに
おにぎり食べたら
どうでもよくなってしまったよ。