美鈴ちゃんは「本当に入ってたかなー?軽いなー」って、持ってきた箱をポーンと天井に高く投げてしまった。ケーキ入ってるんだよね!まさかそんな事をするなんて信じられない。声も出ないくらいの衝撃だ。その箱が床に落ちた時
美鈴ちゃんはニヤリと笑って自分の足でぐにゅっと踏みつける。
小さな箱は影もなく真ん中がくぼんでしまい、生クリームがはみ出していた。
「まちがってふんじゃった」
ペロリと舌を出す美鈴ちゃん。きっと自分の可愛い顔ポーズなのだろうけど、悪魔にしか見えない。
「ひどい」
赤いピカピカした苺と真っ白なクリーム。スポンジもきっとふんわりしていて、お母さんの手作りケーキより柔らかくて甘くて絶対美味しかっただろう。プリムラのケーキをモモちゃんに綺麗な形のまま食べさせたかった。みんなに見せたかったのに……ひどい。
「私の家のケーキだもん。早く持って帰りなよ」
「そんなのいらないっ!」
私は泣きながら叫んで美鈴ちゃんの家を出た。
泣いて泣いてめちゃくちや泣いて、こんなに泣いたのは生まれて初めてかもしれない。
その後、美鈴ちゃんに何度も嫌な思いをさせられたけど、唯一目いっぱい泣いたのは、これが最初で最後だった。