「私のピアノを聴かせてあげる」
いつものように家まで送って、早く帰ろうと思ったら美鈴ちゃんに初めてそう言われた。私はどうしようって困ったけれど、外から見ただけでお城みたいに大きくて豪華なお屋敷にも興味があったので、美鈴ちゃんの後ろから付いてお屋敷の門をくぐった。

美鈴ちゃんの家はやっぱりスゴかった。
芝生があって外車があってシュンシュンと噴水みたいな水が芝生にまかれていて、小さな虹が浮かんでいた。玄関が広くて、その奥には外国のお城みたいなクルクルした階段があって、そこを上ると長い廊下とお部屋のドアがいっぱいあって、その中のひとつが美鈴ちゃんの部屋だった。迷子になりそう。

部屋は美和ちゃんの言った通りのピンクのお部屋で、ベッドカバーもピンク、クッションもラグもピンク。机もピンクでコンポもピンク。チェストもピンクで、一番びっくりしたのがピンクのピアノだった。ピンクがいっぱいでいっぱいすぎて……なんか……気持ち悪くなる部屋だ。

「杏のランドセルは廊下に置いて、あと汚い手で勝手に触らないでね。杏の貧乏菌が移るから座らないで立ってなさい」
私は自分のランドセルを廊下に出し、美鈴ちゃんは家まで私に背負わせたピンクのランドセルを奪ってベッドに放り投げる。
そして下手くそなピアノを立ったまま聴かされた。もうお部屋見たから早く帰りたい。いつ帰っていいのかな?
下手くそなピアノ演奏がアナと雪の女王とわかった時に、お手伝いさんがケーキと紅茶を運んでくれた。お姫様が飲むようなバラの模様のカップの隣には、苺のショートケーキがひとつ置いてある。
わぁ!なんて美味しそうなんだろう。
私もケーキは誕生日とクリスマスだけ食べれるけど、お母さんの手作りだから味はイマイチだ。でもこれは本物のケーキで苺がピカピカしているよ。クリームが雪みたいに真っ白で、とっても綺麗だ。