新学期

廊下に貼り出されたクラス分けの紙を見て、自分のクラスに美鈴(みすず)ちゃんの名前を見つけたとたん、心の中で「あーぁ」って声が出た。

すると隣で「あーぁ」って、本当に声に出している人がいて、顔を見ると榊原君だった。

「美鈴と一緒かよー。二年間地獄じゃーん」
榊原君はその後も「ぐわっ」とか「うぎゃー」とか、わけのわからない短い叫び声を出すと、周りの仲良し男子がそれに気付いて榊原君にキックとかしてきて、榊原君もノリノリでふざけ合いが始まった。楽しそうな榊原君を見ているとうらやましくなる。男子は単純でいいなぁ。深刻さがないもんね。
意地悪で有名な美鈴ちゃんと初めて同じクラスになっちゃったよ。榊原君が叫ぶくらい、やっぱり地獄なのかな。不安で胸がいっぱいだ。

「杏(あんず)と離れちゃった」
「めちゃ残念。えーっ美鈴と一緒なの?」
仲良しの友達に言われて心の中がズンと重くなる。あらためて言われるとキツいからもう言わないで欲しい。私もみんなと同じクラスになりたかった。2組じゃなくて3組になりたかった。落ち込んでたら友達が励ますようにポンポンと頭を叩く。背の低い私はそれをされると身長が止まる気がして嫌だったけど、今は友達の手のぬくもりが温かくて嬉しくて、黙ってされるままでいた。