「ありがとう、お母さん」

雨愛は着替えて晴輝の家に向かう

「ここだ」

晴輝の家は古い平屋だった

玄関にブザーがある

押してみる

返事がない

ドアを叩いてみた

「こんにちわ」

「はい」

かすれた声がした、玄関が開く

「あっ管野、どうして」

「風邪引いたってクラスの男子が言ってて……」

「あー、一緒に行ってる奴に連絡いれたから」

「熱ある?昨日濡れたままうたた寝しちゃったから……」

「少しある」

「食事は?」

「……」

「何か作ろうか?」

「いや、食べたくない」

「上がっていい?」

「散らかってるから見られたくないよ

昨日えらそうに家事は出来るなんていったのに……そのカッコつけたくて、男の二人暮らしなんかやっぱり食事で精一杯」

「だから来たの」

「俺のイメージ崩れるよ」

「三ツ矢くんは笑ってるイメージしかもたないことにしたから大丈夫(笑)」

「ん……じゃあどうぞ」

「お邪魔します」


男の二人暮らしの割りには思ってたより片付いていた

「そんなに思ってたよりはきれいよ(笑)」

「どんだけだよ(笑)」

「足の踏み場がないのかなって一瞬思った」

「父さんが亡くなった時に人がくるから少し片付けた、叔父さんの家族とか来てくれたから」

「えっと、まず症状は?」

「熱だけだよ」

「薬は?」

「さっきまで寝てたから、水飲んだくらい」

「食べるものはある?」

「お米とパンと卵とあと何だろ」

「じゃあまず冷蔵庫みてもいい?」

「うん、汚いよ」

「三ツ矢くんは横になりましょう」

雨愛はご飯のスイッチを入れて流しにたまっている洗い物をかたづける



あー、誰かがいる音、気配、雰囲気……久しぶりだ

晴輝は安心して眠りについた



いい匂い……はっ、管野がそういえば来てたのに俺寝ちまってた

晴輝は体を起こして布団から出る

食卓には沢山のおかずが用意されていた

「あっ、起きた?」

「ごめん、管野が来てくれてたのに寝てしまっていた」

「いいよ、体調悪いんだもん寝ないと治らないし」

「これ、全部管野が作ったの?」

「うん、冷蔵庫空っぽになっちゃった」

「何が食べれるかわからないから適当に食べて、ご飯はジャーの中ね」

「うん、ありがとう」

「余ったら冷蔵庫ね、じゃあ私……」

雨愛は鞄を持って台所を出ようとする

「待って、もう少しいてほしい」

「えっ、ちょっと薬を買いに薬局に……」

「あっ」

晴輝は真っ赤になった

「症状聞いてから薬は買おうと思ってたの、すぐ帰ってくるよ」

雨愛はそう言って買い物に出掛けた

恥ずかしい……

思わずひきとめてしまった、帰ってほしくなかった

晴輝はトイレへ向かった

掃除してくれている、俺どのくらい寝てたっけ、一時間ちょっとか

お風呂ものぞいてみた、キレイになってる

晴輝は布団に戻った、一冊のノートを見る