「あっ、お父さん家のほうにいたんだ」

「今日法事が入ってて、今帰ってきたんだ」

「今ね同級生が御堂にいるから少しそっとしておいてほしいの……あの泣いてると思う」

「同級生?」

「うん三ツ矢くんていう子」

「この間亡くなった人の息子さんか、雨愛と同じ学校だったのか……」

「うん、帰りに見かけてお寺に入っていったから声かけたの、学校ではいつも明るい子なんだよ」

「もうすぐ49日の法要だったな、喪主をつとめたんだよ」

「えっ、高校生で?お母さんは?」

「離婚してるらしいよ、式には来てたみたいだけど名字も戻してたから息子さんが努めたんだ」

「私……着替えてくる」

雨愛は自分の部屋に行った

離婚して、お父さんも亡くなってなんで明るく笑っていられるんだろう、絶対無理してるよね
どうしよう、お父さんからあんなこと聞いたらまた泣いてしまう……



雨愛はキッチンに戻った

「雨愛、暑いから麦茶を持っていってあげなさい」

「はい」

雨愛は父親と御堂に行く

そっと覗くと晴輝はタオルを顔にかけ横になっていた

「泣いたあと寝たみたい」

小声で父親に話す

「そうか睡眠もろくにとれてなかったんだろう、ついててあげなさい、お父さんは家の方にいるから」

「はい」

雨愛はそっとタオルをめくった

(寝てる、可愛い)

雨愛はほっぺたをつんつんする

(きゃー子供のほっぺたみたい柔らかい、寝顔天使ですかー)

雨愛は興奮してきた

「う~ん、父さん……」

(お父さんの夢みてるのかな、どうか三ツ矢くんの心を楽にしてあげてください)

雨愛は仏像に手を合わせ合掌した




晴輝が目を覚ました

(寝てた……)

晴輝は体を起こした

隣に雨愛も寝ていた

(俺が寝てたから起こさずいたら自分も寝たのかな?)

晴輝は雨愛のほっぺたをつついた

口空いてるし(笑)

横になっていた雨愛の胸の谷間に目がいった

晴輝は真っ赤になって自分の借りていたタオルをかける

雨愛はパチッっと目を開けて起きた

「寝てた!」

「うん(笑)」

「あっ麦茶どうぞ」

「ありがとう」

晴輝は少し目が腫れていたがすっきりとした顔をしていた


「あの……さっきお父さん帰って来てて少しだけ聞いたんだけど喪主を努めてたって……」

「ああ、うん二人で暮らしてたから、だから色々考えることも多くて、母さんて人も来てくれたけど俺はほとんど記憶がないんだよ」

「そんな……」

「近くに父さんの弟がいるから困ったらいつでも来なさいっていってくれてる、でも叔父さんにも家族があるしね、一人で暮らしていくつもりだよ」

「大変……」

「そうでも……元々やってたから家事は平気だよ……

俺、こんなに自分の家のこと話したの初めて」

「ご、ごめん私が聞いたから……」

「いいよ、友達に知られたくないって気持ちと誰かに聞いてほしい気持ちがあるんだよな、ここに来てよかった、落ち着く」

「いつでも来て」

「管野、笑ってよ」

「何もないのに笑えないよ」

「そっか涙もきれいけどもっと笑ってる管野もみたいなと思って……」